第7回 “使ってはいけない単語の巻”

 皆さんはJapと呼ばれたことがありますか。これは日本人を馬鹿にして呼ぶ時の言い方です。あまりピンとこないかもしれませんが、Japと呼ばれたら怒らないといけません。これに類した、使ってはいけない英語を今回は学びます。

 

 Japが日本人なら、アメリカ人はYankeeと言います。イギリス人はBrit。ノルマンディー上陸作戦のとき、連合軍の首脳はアメリカ軍兵士とイギリス軍兵士が頻繁に喧嘩することに手を焼いて、“アメリカ軍兵士をYankeeと呼んではいけない。イギリス軍兵士をBritと呼んではいけない。”という通達を全軍に出しました。BritはGreat BritainのBritainを縮めた言い方です。

 

 フランス人のことをFrogと言います。これは相当昔の16世紀から主にイギリスで使われていた言い方で、フランス人がカエルを食べるのを見てびっくりして、“Frog-Eater”と呼び始め、縮まってFrogと呼ばれるようになったようです。

 

 ドイツ人のことはKlautと呼びます。第二次世界大戦のアメリカ軍の出てくる映画ではこの単語は必発です。主に、第一次世界大戦、第二次世界大戦の時のドイツ軍兵士をさしてKlautと言いますが、一般のドイツ人の意味にも使います。ドイツ人はドイツ独特のSauerKraut(酢漬けのキャベツ)を食べるため、Krautとなったようです。

 

 アメリカにはヨーロッパ系の白人もいますが、ラテンアメリカから来た白人に原住民が混ざったようなLatinoと呼ばれる人々もいます。スペイン語を話し、多くは不法移民としてやってきた人々かその子供たちをSpicsと言います。なぜ、そう呼ぶのかは今では、大部分のアメリカ人は知りません。実は、アイルランド人は大部分がカトリック教徒です。アイルランド人のことをMicksと呼ぶので、スペイン語を話すmicks : spanish-micksが縮まってSpicsとなりました。この言葉は相当悪く、面と向かって使ったらまず殴られると覚悟してください。

 

 さて、ハワイには独自のスラングがあり、日本から来た日本人をBobraと呼びます。中国人のことをPake(パケ;第二音にアクセント)と呼びます。白人はHaole(ハオレ)、 半分白人の混血をhapa haoleと呼びます。Haoleなどは別に軽蔑の意味が含まれず、普通の単語として使われます。

 

 中国人のことをChinkと言いますが、多くの場合、日本人、中国人、韓国人などアジア系の総称としての蔑称で、日本人もChinkと呼ばれます。また、東南アジアの人間もアジア系の顔立ちだとChinkと呼ばれます。

 

 ユダヤ人は最近はあまり使われなくなってきた言い方ですが、Kike(カイク)と言います。この言葉の由来はいろいろあるのですが、よくわかりません。ユダヤ人は一見白人ですが、ユダヤ教徒であり、習慣が違います。たとえば正しく血抜きをした肉しか食べず、ユダヤ教的に処理された食物をkosherといいます。ハムを食べない、肉と牛乳を一緒に食さない、など食習慣も多少違います。私の周りにいるユダヤ人は、皆頭がいい人間が多いし、意見を強烈に持っている個性の強い人間が多いような感じがします。ユダヤ人に関しては面白いジョークがあります。

 

 レストランでジュースを注文したらハエが入っていた。

 イギリス人は 飲まずに黙って料金とチップを置いて出て行き、二度とこのレストランには来ない。

 アメリカ人は、ハエが入っていると抗議し、代わりのジュースを持って来させる。代金は払うがチップはなし。

 ユダヤ人は、ハエが入っていると抗議し、代わりのジュースを持って来させ、それを飲み、ハエの入っているジュースも飲んで代金もチップも払わない。

 

 黒人のことはNiggerと言いますが、これは相当悪い言葉です。アメリカでは黒人は長い間、偏見と戦って来ました。いつか、アメリカにおける黒人問題を説明したいと思いますが、南部の州に行くと、白人警官などが随分ひどい扱いを黒人に対してします。自由と平等を理想に掲げるアメリカも、人種差別、特に黒人に対する差別はまだまだ解決には程遠いと思われます。

 

 さて、人種や民族による様々な使ってはいけない単語を見てきましたが、もう一つSexual preferenceによる差別単語を記しておきます。

 同性愛者の事をfagatといいます。同性愛に関して、アメリカは差別撤退に向けて社会が相当努力してきた形跡があります。同性愛はWHOの定義では病気ではありません。性的な個人の傾向で、反社会的な行動を伴わない限り、それは個人の自由であると現在ではされていますが、一部キリスト教会などは依然、強い抵抗感が残っております。
アメリカの軍隊は、伝統的に同性愛が嫌いで嫌いで、こればっかりは勘弁してくれ、と言っていました。同性愛者は判明した段階で即時除隊の規則でした。しかし、実際には軍の内に相当数同性愛者がおり、優秀な人材も多いため、同性愛が発覚した際の除隊騒動を避けるため

 “Don’t ask, don’t tell”の原則(同性愛であるかどうか尋ねてはいけない、また、その種の質問に答えてもいけない)が敷かれておりました。

 しかし、ここ数年、アメリカ軍は同性愛者を差別なく採用し、排除しないという新しい規則を制定しました。あれだけ同性愛を嫌っていた軍が、この方針を受け入れたのは、アメリカ合衆国憲法下の平等の原則の判例があるのですが、まさに煮え湯を飲まされたような決断で、軍の首脳部の苦虫を噛み潰したような顔が思い浮かばれ、結構笑えました。

 

 ここに述べた単語は悪意に満ちたものもあるため、何を言っているのか理解することは必要ですが、自分から使うようなことは避けてください。

 
 

著者プロフィール

小林 恵一(こばやし・けいいち)
1980東京大学文学部西洋史学科卒業、1988年神戸大学医学部卒業。1990年~1993年南カリフォルニア大学ハンティントン記念病院内科レジデント、ハワイ大学内科レジデント。東京八王子東京天使病院内科部長、御代田中央記念病院副院長を経て、1997年米国ハワイ州ホノルルにて開業。2014年より財団評議員。

ジャナメフ